イケメンは文化
イケメンという言葉が一般的になってからどのくらい経つでしょうか。
調べてみると、2000年頃から使われはじめ、
2009年には「ただしイケメンに限る」がネット流行語大賞になっています。
ということは、今の20代は物心ついた時からイケメンという言葉に触れていたということです。
イケメンの定義
イケメンとは、
イケてる:かっこいい、魅力的、面白い、良い、
メン:メンズの略、もしくは、顔という意味での「面」
という非常にスラング的な曖昧な言葉です。
美男子の表現
容姿に優れた男性を表す言葉は古来から色々あります。
二枚目、男前、色男、水も滴るいい男など、ほとんどは歌舞伎に由来します。
ハンサムは英語ですが、最近使われなくなっています。1990年代までは使っていたような気もするのですが・・
最近は70代のおばあちゃんでも「イケメン!イケメン!」と騒いでいるくらい、他の表現に比べて「イケメン」は現在、圧倒的に市民権を得ています。
イケメンとは顔だけではない?!
ハンサムを除いてほとんど歌舞伎用語しかなかったことを考えれば、
「イケメン」は全く新しい概念だとも言えます。
二枚目、男前、色男はそれぞれ意味するところがやや異なりますが、イケメンはそれらの意味合いを全て含むだけでなく、もっと広い意味合いも含んでいる可能性があります。
歌舞伎用語をひもとくと、イケメンの正体が見えてきます。
イケメンのルーツを探る
二枚目
二枚目とは、歌舞伎でいう美男子役のことです。
昔は現代とは比べものにならないほどの格差社会でしたから、庶民の家に美人が生まれれば、お金持ちの妾(現代の愛人に近い)にさせるのは当然という文化がありました。
今でこそお金目当てと言えば汚いことという認識が強いですが、当時はお金持ちの所有になることは、仕事というか出世というか、とにかく当たり前の感覚だったわけです。
現代のように生存できないほど生活に困るわけではない状況で好きに男性を選んでいいよと言われれば、好みのイケメンかお金持ちか、悩みに悩んで結論が出なかったりしますが、
「お金持ち一択で」と圧力をかけられれば、そんなの嫌よと言ってイケメンに走るのが女心というものです。
歌舞伎の演目はもちろん、古来からの恋愛話はそんな題材であふれています。
このように、二枚目とは、純粋に容姿が魅力的な男性を指す言葉です。
男前
男前も、歌舞伎にその語源は由来します。
「前」というのは動きを意味し、歌舞伎では動きの美しさが大事なことから、男性が美しいことを男前というようになった説があります。
また、腕前、一人前、などその属性や機能を強調する意味合いがあり、男前とはそこから男らしさを強調している言葉でもあります。
二枚目が純粋に美男子を指しているのと違い、
男前は、美男子であることと同時に、性格や行動、態度が男らしい、男気があることの両方の意味合いを含んでいます。
色男
色男は、歌舞伎で男女の濡れ場を演じる濡事師に由来します。
濡事師が妖艶な色白美男子にみえるよう、顔を白く塗ったのが語源とされています。
色白は最近流行りのしょうゆ顔や塩顔イケメンの必須要素と言われていますが、昔は美男子といえば色白の優男を指していました。
色男は、美男子であることと同時に、色っぽくてエロいこと、女性からそのような対象とされること、女性にモテること、の意味合いを含みます。
このように考察すると、古来のいわゆる美男子を指す言葉は、容貌そのものの美しさの他に、行動や女性とのからみの意味合いを含んでいることが分かります。
イケメンが含む意味合い
イケメン○○
「イケメン○○」という言葉が定着していますが、これはなかなか興味深いです。本来、美男子であることとは全く関係ない職業にイケメンという形容詞をつける風習です。
例)イケメン消防士、イケメン棋士、etc…
逆に、イケメンであることが想定される職業の枕詞になった場合は、イケメン度が非常に高いという意味合いも出てきます。
例)イケメン美容師、イケメンホスト、etc…
その職業に就くのが難しいとされているものほど、たいした美男子じゃなくてもそう表現されます。
例)イケメン弁護士、イケメンドクター、etc…
可愛らしいおばあちゃんに「イケメン先生(ハァト)」なんて言われているのを見かけると、こ、こんな男が、、、と仲間うちでは衝撃を受けたりします。。若いだけでは。。。
イケメンとは女性から支持されているということ
二枚目のところでも触れましたが、現代は女性が男性をある程度自由に選べる時代になりましたので、
好きでもないお金持ちと結婚するくらいならイケメンと心中してやる!!
という状況に陥ることはまずなく、、
求められるイイ男像としては、容姿と中身と収入、職業などのバランスの良さが大事になっています。
歌舞伎に由来する美男子を指す言葉は容姿だけでなく、性格などの中身や、女性にモテるなどの意味も含んでいますが、
現代でいうイケメンはそれに加えて、女性が男性に求める、職業的なものおよびその他の要素を多分に含んだ表現と言えます。
「イケメン」は魔法の言葉
特に美男子を連想させない職業に”イケメン”がついた時に一気に華やぐ感じはすごいものがあります。
イケメンアルバイト?!
私が最近見つけた「イケメン○○」のうち、最も感心したのが、
「イケメンアルバイト」。
アルバイトです、アルバイト。
え?一体なんのアルバイト?
という疑問よりも先に、
女性社員にモテ、
同じアルバイトの女性にもモテ、
お局様にも可愛いがられてるんだろうなぁ
となんとなくイメージできてしまうから、すごい。。
実際、そこまで美男子じゃなかったとしても、なんとなく爽やかで女性全般に好かれていればイケメンと呼ばれてOKな世の中です。
おこぼれでイクメンも・・・
イケメンの言葉のイントネーションに引っ張られて、なぜかイクメンもなんとなくイケメン感があります。
育児さえしていればイクメンと呼んでいいはずですが、なぜか、オシャレに育児をこなす姿がイクメンと呼ばれているような感じもします。
現代の女性が求める要素をバランスよく持っている男性がイケメンだとしたら、
家事・育児もある程度負担してほしいという女性の願いを叶えている姿がイケメンだとも言えるのかもしれません。
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