シミには正確な診断が必要です!
種類によって治療法が違うのはご存じですか?
シミとは
美しい肌の色は、色白か色黒かに関わらず、全体が均一です。
シミとは局所的に一部の色が濃くなったもので、美しさのレベルを下げることが多いです。
一般的にシミと呼ばれるものには実はたくさんの種類があります。
種類によって治療法がかなり違ってきますので、どのシミかを見分ける技術はとても大切です。
シミは深さによって色合いが違う
どのシミも、メラニン色素が皮膚の中で増えています。
メラニン色素そのものは黒いもので、どこにあったとしても色が変わるわけではありません。
ですが、肌の組織の色と重なることで、メラニンが増えている場所によってシミの色合いが違ってきます。
- 角層・・・黒、こげ茶
- 表皮・・・茶色
- 真皮・・・青、灰色
(図)
ひとつの層だけではなく複数にまたがる場合もあり、その場合の色合いはやや変わってきます。
熟練してくると、シミを見ただけでどの種類のシミか、簡単に薄くできそうかなどが分かるようになります。
(何万人ものシミを治療していないとそれは難しいんですけどね)
シミのできやすい肌質
シミができやすい肌質はあります。
ただ、ひとりの人にすべてのシミができやすいということはありません。
特定のシミに関して、できやすい肌質があるのです。
シミの種類
代表的な4種類のシミと、厳密にはシミではないけどシミのように見える炎症後色素沈着について解説します。
そばかす(雀卵斑)
まずは「そばかす」です。
そばかすの特徴
3歳以降にできる、細かい点を散りばめたシミです。
左右対称に散らばることが多く、鼻にもできます。
そばかすができやすい肌質
遺伝的な要素があります。
色白でやや乾燥気味の肌質の人に多くみられます。
やや女性に多いです。
白人に多いです。
そばかすは可愛く見えることも
10代、20代の若い世代でよくみられるので、老化した印象は与えにくいです。
場合によっては可愛らしくチャームポイントのように感じさせる場合もあります。
ですが、老人性色素斑(ふつうのシミ)も増えてくるような年代になると、そばかすっぽい可愛らしさは失われてしまいます。
顔全体がシミだらけ……という状態になりがちです。
そばかすの色は季節で変動しやすい
メラニンが増加しやすい状態(紫外線の多い夏や女性ホルモン)で濃くなりやすく、冬などではやや薄くなります。
老人性色素斑(いわゆるシミ)
次に、老人性色素斑(いわゆるシミ)です。
これぞ、シミ
いわゆるシミと言ってイメージするものはこれのことが多いです。
老化とともに増えます。
紫外線を浴びる機会の多かった人は、30歳頃から著明に増え、いつの間にかシミだらけ……なんてことも多いです。
光線性花弁状色素斑
海水浴などで強い紫外線を浴びた後にできる、花びらのような形のシミです。
これも、老人性色素斑に近く、治療法も同じです。
シミ(老人性色素斑)ができやすい肌質
メラニンが作られやすい肌質ではできやすいです。
Fitzpatlikのスキンタイプ分類のtypeでいう、色が黒めの人の方がシミはできやすいです。
(図)
ですが、スキンタイプ2の色白な人でもシミそのものはできます。
むしろ肌のベースが白いぶん目立ちやすいという側面があります。
紫外線の影響による要素が大きいので、スキンタイプに関わらず長年の生活習慣に左右されます。
シミがあると老けた印象に
若い頃には少なく年を取ると増えるので、老化の象徴のようなイメージがあります。
実際よりも年を取った人を演じる時にする特殊メイクでは、よくシミやイボを書き加えたりするほどです。
シミがあると清潔感もダウン
肌の透明感は清潔感と直結します。
老人性色素斑が散見される人の顔面には、同時にイボやホクロもみられることが多いです。
全体的にくすんだ印象になってしまいます。
真皮サイトメラノーシス(ADM)
真皮サイトメラノーシス ―― Acquired dermal melanocytosis(ADM)―― についてもお話しておきます。
ADMの特徴
13歳以上(多くは20歳以上)に初発します。
通常は表皮にあるメラノサイト(メラニンを作る細胞)が真皮にできています。
色は灰色~青色っぽいことが多いです。
茶色の色合いも帯びたものは、真皮だけでなく表皮にまでメラニンがあるタイプです。
頬やこめかみのところに左右対称に広がっているパターンが多いです。
目の下のクマのようになっているものもあります。
ADMができやすい肌質
どちらかというと色黒傾向で、肌がしっかりしている、ホクロの出来やすいタイプに多い印象です。
遺伝傾向があります。
診療経験からは、フィリピン人など東南アジア系の人に多いです。
ADM以外の、「アザ」と呼ばれるようなシミ
ADMは老化や紫外線によってできるシミとは違い生まれつきの要素が強いです。
同様に、生まれつきあるシミのようなアザに扁平母斑というものがあります。
見た目は薄いシミ(老人性色素斑)のようです。
肝斑
次は肝斑です。
肝斑の特徴
16歳以降にできる、もやっとした薄いくすみのようなシミです。
左右対称のことが多いですが、そうでないこともあります。
濃くなったり薄くなったり、色合いが変動しやすいです。
紫外線で悪化します。
生活習慣の改善により自然に消えることがあります。
肝斑ができる原因
主な原因は、肌をこする刺激による慢性の炎症です。
化粧やマッサージを含めた自己流の肌ケアをする女性には多くみられます。
その習慣のない男性には少ないです。
男性でも仕事などで化粧をする習慣があったり、頻繁にマッサージをしたりする方であれば、現在悩んでいるシミが肝斑の可能性もあります。
その場合は診断してもらうと良いですね。
肝斑ができやすい肌質
女性に多く女性ホルモンが関係します。
と言われていますが、実際は、男性でも化粧やマッサージをする人には高率にみられます。
女性ホルモンはメラニンを多くする作用があるので肝斑に限らずシミ全般を悪化させます。
経口避妊薬(ピル)は女性ホルモン製剤なので、服用者は特に肝斑ができやすいと言われています。
ただあまり化粧やマッサージをしない女性には肝斑はほとんどできません。
炎症後色素沈着
少し種類が異なるのですが、炎症後色素沈着に悩む方もいるかもしれませんね。
炎症後色素沈着は外傷や熱傷などの後、また湿疹やニキビなどの炎症のあとに生じる一時的な茶色い色素沈着です。
茶色い色合いがつくという意味でシミと同等に扱われることもあります。
ただ、性質がまったく異なるためシミとは別物として考えた方がわかりやすいです。
シミと違って自然と消える
炎症後色素沈着は何もしなくても、時間とともに自然と消えます。
放っておけば時間とともに自然に消えるという意味で、他のシミとは区別して考えます。
いわゆるシミという言葉から連想するものは、自然には消えないものです。
肝斑も、その主原因は慢性的な刺激による炎症。
その生活習慣をやめさえすれば自然に治るという点では、一種の炎症後色素沈着とも言えます。
ニキビがシミになるってホント?!
ニキビが繰り返しできるところは慢性的に赤茶色いですよね。
「ニキビがシミになる」なんて噂を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
炎症などの刺激を慢性的に受けているところでは、1つの炎症とそれによる炎症後色素沈着が改善しても、どんどん新しく炎症が起こり再び色素沈着が生じます。
そのためいつまで経っても色が消えません。
そのうち炎症の赤色と色素沈着が混じった、赤みを帯びたくすんだ茶色の色調が慢性的に持続してしまうことがあります。
例えば、花粉症で目をこすり続けると、その刺激で目の周りの皮膚がくすんでしまいますよね。
重症のニキビ肌で同じような場所にニキビができたり治ったりを繰り返しているうちに、赤みと茶色みが混ざったような色合いが消えなくなってしまうこともあります。
前にできたニキビの炎症後色素沈着が治りきらないうちに、新しく同じところにニキビができる負のループです。
ニキビがシミになるわけではない
この負のループが繰り返されると、ほとんどシミ(いわゆる消えない普通のシミ)になってしまったように感じますがそれは違います。
新しくニキビができず、最後に治ったニキビの炎症後色素沈着が消えれば、時間をかけて元の肌状態に戻ります。
(ニキビ痕のクレーターを除く)
大きなダメージを受けた部分の皮膚は、炎症後色素沈着がすっかり消えるまでにかかる時間がとても長いです。
また、搔き壊して苔癬化(たいせんか:キメが粗くなりザラザラと硬くなった状態)していれば、それが引くのも時間がかかります。
表皮損傷からシミができる原理
ニキビがシミに変わるわけではないと書きましたが、稀にニキビが繰り返しできていた部分に一致してシミができることがあります。
表皮がかなりのダメージを受けた場合(ニキビに限らず、外傷や熱傷、花粉症やアトピー性皮膚炎で搔き壊してしまった場合など)は、そこの部分の皮膚が弱っている状態です。
そのため、シミ(老人性色素斑)ができやすい可能性があります。
稀にこういうこともありますが、ほとんどの場合はニキビ後の茶色いものは炎症後色素沈着です。
炎症後色素沈着とシミを区別する理由
診断によって、まったく治療法が異なるからです。
シミ(老人性色素斑)に効果的なレーザーを炎症後色素沈着に照射するとかえって悪化してしまいます。
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